花も実もある話―おばあさんのミニ農園―

植物好きが高じて富士山麓と伊豆に畑を作ってしまったご婦人の土いじりエッセイ。
植物に纏わる思い出や栽培時のエピソードを品のいい日本語で綴る。

えっ?こんな単語に“お”をつけるのと思うような事がしばしば。
でも、昨今よく目にする似非マダムの威圧的で下品な悪臭がないので、読み心地がいい。
丁寧だけれど慇懃無礼な感じがしない。
取ってつけたようなとか、背伸びしたような必死さのない上品さ、というのは話すにしても書くにしても一朝一夕で身に付くものではないなと。
こういうのを育ちがいいというんだろうな。
上品さと茶目っ気に溢れている。

取ってつけたような感じがしないといえば、所々に現れる成分の話。
この手の本に香り成分の物質名とか植物ホルモンの名前とかが出てくると字数稼ぎにどこかからひっぱて来たな〜という印象を受けることが多いのだけれど、長ったらしいカタカナがつらつら並んでいてもこの本はなんだかとっても自然な感じがする。世間話の延長線上にややこしい名前の香り成分だの毒だの。

しょっちゅう清水の舞台から飛び降りては珍しい様々な種苗を求めたり(今ではその辺のホームセンターで安価に売っているものが殆どでその辺も驚き)、面白そうな果物を食べたら大抵種を播いてみたり。
幾度盗難にあっても富士山麓の畑に奇麗な花を植えてみたりと、チャレンジャー。
(同じ場所で幾度も幾度も盗難に遭うのは同一犯なのではと思う)
アボガドやドリアンの種を蒔くとうまくやれば芽が出て観葉植物として楽しめるらしいですよ。
やってみたいな〜

化学肥料との出会いが、父親が作ってくれて与えたらむくむく大きくなったので化学肥料が大好きにというほのぼのエピソード。
化学肥料でここまで和めるとは思わなかった。

<<西川勢津子『花も実もある話―おばあさんのミニ農園―』東京新聞出版局 1985>>

一日江戸人

図解お気楽江戸時代ガイド。
江戸っ子寄り目線で江戸気分を満喫できる一冊。

折角胡乱な江戸時代に興味を持ったのだから『コメディーお江戸でござる』の杉浦日向子先生(そう番組中で呼ばれていたので敬称をつけてみる)の本を読んでみようと手にとって、カバーの折り返しをみてショックを受けました。お亡くなりになっていたのですね・・・

作者の描いたマンガチックなイラストが添えられているのを見て、絵が巧いな〜と思っていたら、デビューは漫画家だったのですね。勝手に大学で歴史を研究しているか歴史関係の著述業が本業の方だと思っていました。

料理関係の本と言う訳ではないのですが食に関する記述が何箇所かあって、ちょこちょこっと書かれているだけなのに大体の作り方と味の見当がつくのは先に読んだ『江戸美味い物帖』とは違うなと思いました。
多分、実際に作ったことがあるのだろうなと。

<<杉浦日向子『一日江戸人』新潮社 2005>>


江戸の生活と風俗

時代小説をちょこちょこと読むようになったので、背景を知っておくと面白いかなと三田村鳶魚の『江戸の生活と風俗』。新聞や雑誌のコラム、講演等を纏めたもの。

資料として読む心算が、すっかり鳶魚の操る日本語の魅力にクラクラ。
とくに講演の記録の語調がおっとりしていて魅力的。何歳のときの講演かはわからないけれど、今では殆ど耳にする機会がない言い回しが使われているので、頭の中では鳶魚おじいちゃんがお話してくれていました。

文章中の現在が何年なのかはっきりしませんが、江戸時代のご近所づきあいと文章中の現在のご近所づきあいを比べて昔は良かったと嘆いているのですが、その現在が戦争の最中らしい記述。
戦争をしていた頃も都市部の近所同士の繋がりの希薄化が問題視されていたのですね。

胡乱とした江戸を自分の中に作りたくて読んだのですが、「江戸趣味」という言葉は、徳川時代というものは長くて文化だって風俗だって変化している、何を指しているかわからんという一章に出会ってなんとなく叱られたような気分に。
今度からこの手の文章を読むときにはいつごろの話なのか年代に気をつけようと思います。でも、この手の本て、大抵年号だけで西暦を付記してくれることが少ないから不便。書いてる方は年号を書けばいつの事かすぐ解るのだろうけれど、読む方にその知識があるとは限らない…
「江戸っ子」という言葉も、単に江戸生まれの人、ということではないというお話。
鳶魚はこの単に江戸で生まれた人を江戸者とか江戸人という言葉で読んでました。

細やかな雰囲気の文章なのですが、批判的なときは随分と手厳しい。ずばっとばしっとときにはぐちぐちと切って捨てます。
その辺りも、魅力的。
品のあるおじいちゃんが、こだわりをもっている部分では口喧しくなる。というのがイイ。
自分が生まれたときには父方も母方も祖父が亡くなっていたので“おじいちゃん”に憧れがあります。
オヤジスキーとは別にね。

<<三田村鳶魚『江戸の生活と風俗』中央公論社 1998 三田村鳶魚文庫23>>


遠野物語・山の人生

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タイトルは知って(略)シリーズ。柳田国夫の『遠野物語・山の人生』。
学生時代、民俗方面の友人が多かったのと違う方面の友人たちが京極夏彦の妖怪シリーズに嵌っていたので周囲は殆ど読んでいる中、なぜだか依怙地になって読んでいなかったのを今頃になって読んで見る気になった。

「遠野物語」の語り口が訥々としていて大層読み心地がいい。
きっと朗読したのを聴いても気持ちがいいだろうなと思う。
NHKの五分番組「漢詩紀行」で書き下し文を読んでいた中村吉右衛門さんあたりどうでしょう?
「メイシー」のナレーション風にほんわかと仲村トオルさんも捨てがたい。
若山弦蔵さん、羽佐間道夫さんだったら毎晩聞いて眠りに就きたい。
女性だったら岸田今日子さんかな。

内容はアレです。
もしかしたら生物学的に人類かもしれない存在と山中で遭遇したので撃ってしまいましたとか、焼け石を食べさせてしまいましたとか、そんなの満載。
坦々とあっさりと語られるから怖い。
何をもって「人」と看做すかなんて、時代だの文化だので違うんだなっていうのをまざまざと見せ付けられます。

「山の人生」は、山の中で何か人っぽいのと遭遇したり、いろんな事が起こったと言う報告があちこちであるよ。きっと何か居たんだね、何かは今は断定しないけど研究してみたらいいんじゃない。というお話。
山の人たちは基本的に裸か半裸らしい。
里から山に行った人もけっこういるらしい。
火は使わないらしい。
そんな記述を目にする度に、夏以外は寒そうだなとか、顎が弱かったらやってゆけないなとかきになりました。

上のイラストは「山の人生」にちらっと出てくる「せこ子」。
はじめ、三〜四寸と読み間違えて「おっ、コレはちょっと可愛いかも」と思っていたら、単位が尺でした。
1m〜1.2mあるとあんまり可愛くないな。
それどころか20も30も群れていたら、ただそれだけで相当怖いなと。

<<柳田国男『遠野物語・山の人生』岩波書店 1976 岩波文庫>>

金GOLD(略)展

国立科学博物館で開催中の金GOLD黄金の国ジパングとエル・ドラード展に行ってきました。
無料チケットがあるからと友人が誘ってくれたのですが、実はここ数年の間にやっていた、宝石展や真珠展みたいな余り趣味のよろしくない感じなるのかなと殆ど期待せず、常設展の序にちらっと覗けばいいや位の心算で(すまぬ、友よ)出かけました。
ところが、常設展そっちのけで二時間半かけてじっくりじっくり堪能。

出だしははまるっと金の財産的価値を忘れられる感じの仕上がり。他の金属と腐食の仕方を比較してみたり、重さを比較(実際に持ち上げて体感できる)してみたり、ほらほらここまで伸びるよと細長く伸ばしてみたり。
gあたりの価格を忘れた所で、自然金の展示。鉱物標本を眺める目で金を満喫できます。
出るときにはあんな塊でごろんと出るものなんですね。記録上世界最大の自然金の模造品(発見されてから数日で鋳潰されたらしい)と世界で二番目に大きい自然金塊を見ることが出来ます。
グネグネとしていて光沢のある塊は、形状が美しい。
少し雰囲気が違うが、中瀬金山(兵庫)で発見されたものは彫刻的で息を呑むほど。石英らしき白い鉱物から金の翼が幾枚も生えている。

中盤はアレここは東洋博物館だったっけ?というような雰囲気に。
でも、解説はしっかり科博。
仏像を“飛鳥時代に施された塗金が今でもこんなに残ってる”という視点で眺めることになろうとは思っても見ませんでした。

コロンビアとの国交100周年記念企画ということで、エル・ドラードパート?はコロンビアから出土した黄金製品を展示。
コロンビア出土のあれこれはデフォルメ度か抽象性が高すぎてプレートに示してあるものを象っているとなかなか判別できないあれこれの、デザインがカッコいい。コレは何の動物を模していると言われても???となるけれど、形としてカッコいい。
年代があっさりと200BC〜AD1600とかなっているのも、なんかいい。
コチラは巡回展では見られない上野仕様とのこと。

多分、もうアレだけの金を一日で眺めることはないのではないかなと思います。

金GOLD黄金の国ジパングとエル・ドラード展
http://kingold.jp/index.php

祝茄子収穫

庭の真ん中に植えた茄子に漸く実がついた。
15cm程に育ったので収穫。

庭でとれた青しそとみょうがと一緒に塩揉みにして頂く。

数株ピックアップして定植した後苗床に放置していた補欠モロヘイヤも引っこ抜いてお味噌汁の実にした。
間引かなかったので茎ばかりヒョロヒョロ長くなって葉は先端に四、五枚小さいのがついているだけなのだけれど、プランター一杯に繁ったので叩いて汁に入れるのにはなんとか足りた。
あんなに小さくてもちゃんとネバネバ。
定植したレギュラー陣は、毎日こんなに暑いのに一向に大きくならない。
モロヘイヤ食べ放題の日々を夢想していたのに現実は厳しい。

六月に種を蒔いたゴーヤは60cm位。
今朝、一番大きな株が一つ目の花を咲かせた。

江戸美味い物帖

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読んでいるとお腹の空く一冊。
江戸時代の食に関する記述をアレやコレや引っ張り出してくるエッセイ。
今では廃れてしまった食べ物や、昔から作り続けられているもの、現代では名前や形が変わっているものなど様々な食材や料理が紹介されている。
数百年前に途絶えてしまったお店の名物料理がさも美味げに書かれているのを読むのは不思議な感じがする。

読んでいて思ったのは、この著者は余り料理をしない人なのではないだろうかということ。
料理屋の料理や食材そのものを書いたときには、シズル感のあるおいしそうな文章なのに、惣菜等の具体的な調理法になると、読んだだけではどんな味になるのかテンで解らない。
予め作り方を知っている料理でも、全く別のものが出来上がりそうな書かれぶり。
引用されている文献の方も多くが、作ることを前提にして書いてないような感じ。

<<平野雅章『江戸美味い物帖』 廣済堂出版 1995>>




読メモ080722

Yの悲劇…p326まで
ドルリー・レーン60歳、懸垂壁登り。
ワッセルマン反応が何か解りません。

エウパリノス…P.33まで
死者の国で語らうソクラテスとパイドロスの亡霊。
今までのところ割とコミカル。
死者の国とか亡霊とか、その掴み方が凄い。

読メモ080721

Yの悲劇…P214まで
文体と活字になかなか馴染めず目が滑る。
ハムレット荘とその住人が凄い。イワエンを思い出した。

歴史(上)…p25まで
久々の半身浴のお供にもう何度目か分からない再挑戦。巻一さえ読みきった例しがない。
取り合えず巻一読破が目標。でも、きっと次回の半身浴までに忘れる。

おまけのこ

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しゃばけシリーズ第四弾。こちらも短編集。
鳴家の鳴き声がけっこう定着してます。

しゃばけのこわいは結構可愛い。
おどろおどろしいというよりは、ジミに嫌な奴。
クラスに二人はいそうな感じ。
屏風のぞきメインのお話があってうれしい。

<<畠中恵『おまけのこ』新潮社2005>>

TBT529 どんな浴衣が好きですか?

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正直な話、襟足しか目に入らないので柄が記憶に残りません。


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浴衣はやっぱり襟の抜き方ですね〜
奇麗な人が似合いの色柄の浴衣を着ていて、襟の抜き方が悪いとがっかりします。
抜きすぎていてるとだらしがないし、きつすぎると暑苦しくて何の為の浴衣だろうって話です。
十才ぐらいまでの女の子が、白地に金魚や朝顔、向日葵の柄を着ているとほのぼのしていて好きです。

浴衣もいいですが、女性が暑い日に涼しげな柄の単を着ていると、萌えます。
暑さなんて微塵も感じさせずに歩くのもいいですが、暑苦しさにちょっとだけ草臥れているのも良いものです。

この所、夏場になると昼夜を問わず浴衣や甚平を着ているお嬢さん方を目にしますが、肩まで袖を捲っているの事がままあって、絶望的な気分になります。
キャミソールだろうがチューブトップだろうが、洋服だったら好きなだけ肩を出してください。
でも、和装のときはやめて欲しいものです。




FC2トラックバックテーマ 第529回「どんな浴衣が好きですか?」

ねこのばば

しゃばけシリーズ第三弾は動物特集。というか動物系妖怪特集。
猫又になりかけていても猫ネタは和みます。そしてついに金次登場。
佐助のポチ時代が必死で可愛い。

若旦那、17か18でしたよね。
寝付いてるときでなくても手代にあーんて匙で食べさせられているのはちょっと衝撃でした。

<<畠中恵『ねこのばば』新潮社2004>>

秋霜

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ブラディ・ドールの4作目。
画家の遠山(結構いいお年)が娘程の年頃の愛人の為に殴られたり崖に上ったりする話。
一冊目で生き残った内田悦ちゃんが、意外な所から復帰で川中も宇野さんも頑張ってます。
藤木はどんどん人間離れしてゆくきがします。なんだかそういう妖精さんなのではないかと思う今日このごろ。

肉迫でちょろっと土崎が話していたN市沿岸の海のヌシ蒲生さん登場。
土崎と蒲生と葉巻はセットで楽しい。
爺キャラ好きにはパラダイスの様な一冊。

<<北方謙三『秋霜』角川書店 1990>>


『本陣殺人事件』

お猫様身まかられ話が2編入っている、猫好きには心痛む一冊。

「本陣殺人事件」
密室モノ。冒頭に紹介されているルルー「黄色の部屋」、ルブラン「寅の牙」といった作品も読んで比較してみたら面白いかもしれない。
推理小説家って、他の作家の作品を自作中で語るの好きだよね。

「車井戸はなぜ軋る」
そっくりさんシリーズ。
いかにしてそっくりさんが一組出来上がるか、の解説を考案するのって大変。
事件そのものの仕掛けも作るの大変だろうけれど、それと同じくらいの手間なんじゃなかろうかと思う。
自分が似てない兄弟の一員なので、腹違いでそこまで似るか?と思うのだけれど、従兄弟だのその子等だのまで広げると矢鱈と似ている顔パーツがごろごろ見つかるのでそんなもんかと思ってしまう。
でも、そんなそっくりさんがごろごろ転がってるかいって突っ込んだら金田一シリーズは楽しめないんだろうな。
京極夏彦の巷説シリーズに同じ顔が5人というのがありましたね。

「黒猫亭事件」
猫好きの方にはお勧めしない一遍。とても悲しくなります。
が、金田一の可愛らしさがひときわ際立つのもこの一遍。
兎に角周到で回りくどい計画殺人。
風間を語る金田一がむっさ可愛い。つい学生時代がでちゃってる、というのがよいです。

<<横溝正史『本陣殺人事件』角川書店1973>>

TBT522 「得意料理はなんですか?」

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缶詰開けるのは料理のうちに入るのでしょうか。
人間のご飯だってちゃんと作れます。
やる気さえあれば。

ハナ兄さんは鼻の側に斑があるからハナ兄さん。

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以前のネコ漫画からキャラクタの使いまわし。

前回の悔しさがあったので、今回は初めからネコ。
もう一つのネコごはんネタと迷ってこっちに。

新しいテーマが出るたびに、ネタを捻るのは楽しい。
国際結婚も一人カラオケもネタが纏ったのに時間が…

今回のテーマはコチラ
第522回「得意料理はなんですか?」


花よりもなほ

テレビスポットのキャッチフレーズは「仇討ちエンターテイメント」。そう聞いて思い出すのは『SAMUEAI FICTION』ですが、『花よりもなほ』はもう少し落ち着いた感じ。
笑わす所は笑わすけれども、しんみりする所はしんみりさせる。メリハリがいい。
笑えるのだけれども、画面の多くは静か。

舞台はボロボロの貧乏長屋。赤穂浪士の潜伏先の一つ。
あのセット、あちこち歪んでいて作るの大変だったろうな〜。
先の割れたGペンで描いたような長屋に住む人々の悲喜交々を仇討ちを主軸に描く。
主人公は赤穂ではなく信州松本出の仇もち。剣術師範の家に生まれるも、只管弱い。

基本的に画面の多くは汚い長屋に占領されているのだけれど、その対比で折々入るキメゴマ的なカットが良く映える。
暗褐色中心の中、鳥居や格子、暖簾等の赤が強く印象に残る。



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